就労移行支援の利用を考えているけど、「利用したら本当に就職できるのかなぁ」「せっかく利用しても就職できなかったらどうしよう」そんな不安を感じられている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは現役の就労移行支援スタッフのメガネ君が長年支援をしてきて、就労移行支援を利用してどのような就職先があるのかを紹介したいと思います。
少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。
そもそも就労移行支援とは?
就労移行支援を利用したらどんな就職先があるのかを紹介する前に、まずは就労移行支援について正しく理解しましょう!
就労移行支援は
一般企業への就職を希望する、65歳未満の障害のある方に、一般企業で就労するための訓練や就職活動のサポートを行う福祉事業所で、利用期間は最大2年間。
就職だけでなく、利用した方が就職した後も長く働き続けられるよう定着支援サービス(6ヶ月)も実施しています。
就労移行支援を詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。
就労移行支援を利用したらそもそも就職ってできるの?
では次に、就労移行支援を利用したら、本当に就職ってできるのか?についてお答えしたいと思います。
メガネ君のこれまでの経験で言うと「人により」です。
理由は、就労移行支援を利用している方でも、その方の障害や体調の状況が全く異なるからです。
ここではどんな方が就職できなかったか、メガネ君のこれまでの経験から紹介していきたいと思います。
体調がまだまだ安定していない
就労移行支援を利用しても就職できない方でよくあるのが、まだまだ体調が安定していない方です。
働き方は人によって様々ですが、正社員で働くとなると週5日×6時間(1日)の勤務条件で募集している企業が多くあります。その状況に合わせた働き方になれていくためにも就労移行支援を利用する一つの理由にもなるのですが、まだまだ体調が安定しておらず(まだ療養が必要な状態)就労移行支援にも通い始めたのはいいものの、途中で体調を崩してしまい利用し続けるのが難しくなる方も一定いらっしゃいます。
そんなときは無理して利用し続けず、一旦利用をストップしましょう。
就労移行支援は人生に一度きりしか使えないなんて聞くこともありますが、安心してください。しっかりと理由があればほとんどの自治体で再度利用が可能です。
途中で合わなくて辞めてしまう
就労移行支援にはいろんな方がいます。(利用者もスタッフも)
皆さんが集団生活でこれまで経験されてきたのと同じように、「合う人もいれば」「どうしても合わない人」います。そんな環境で利用しているとストレスあがたまり、通うのが嫌になって辞めてしまう。という方もこれまで多くいました。
そんなとき、支援員のスタッフの方は「会社でもいろんな人がいるので」「うまく付き合う方法を考えましょう」と言ってくれると思いますが、メガネ君も基本その考えに賛成です。(どこにいっても自分に合わない人はぜっったいいるので)
ただし、自分なりに工夫してみてもどうしてもダメ!というときは、無理せずに途中でやめるのも一つの手だとは思います。そういったとき、複数の事業所を展開している就労移行支援だったら、近隣の他の就労移行支援を見学してみたり体験してみたりしてみましょう。事業所によって本当に雰囲気が全く違うので、何箇所も経験していれば、合う場所も必ず見つけられると思います。
2年間利用しても就職できなかった
残念ながら、就労移行支援の利用期間でもある2年間利用したけど就職できなかった。という方も残念ながら一定数います。
理由は様々だと思いますが、多くの場合が以下に当てはまるのではないかなと思います。
- 就労移行支援事業所が就職のサポートしてくれなかった
- 障害の状況(度合い)により就職できる企業がなかった
- 自分の働きたい場所がなかった
メガネ君がこれまで経験してきた中で意外と多いのが「就労移行支援事業所が就職のサポートしてくれなかった」という理由が結構多いような気もしています。
残念ながら就労移行支援事業所の中にはまだまだ就職者数をほとんどだしていない事業所が全体の3割ほど(全国の就労移行支援が3000箇所ほどあるので、1000事業所)は1年間で1名も就職者をだしていない就労移行支援です。
皆さんはそんな就労移行支援を利用しないように気をつけてくださいね!
それでも、就労移行支援からの就職者数は増加傾向
ここまでの内容を見ると、就労移行支援を利用しても就職できないじゃん。と思ってしまうかもしれませんが、だんだんと、就労移行支援事業所を利用した方の就職者数は増加傾向にあります。
以下のグラフ(左の棒グラフ)を見ていただくと、平成20年度の就労移行支援を利用した方の就職者は1,111名(青の棒グラフ)。比較して令和元年の就職者は13,288名と約10倍近くになっていることがわかります。
まだまだ発展途上な就労移行支援が多いですが、ちゃんとした就労移行支援を見つけることができれば、あなたにあった就職先をしっかりと探してくれるでしょう。
就労移行支援の就職先を紹介!〜雇用形態編〜
では、次に就労移行支援を利用して、就職したらどのような雇用形態で働いている方が多いのかを紹介したいと思います。まずはじめに、就労移行支援を卒業して就職された方のほとんど(メガネ君の感覚では、大体8-9割)が障害者雇用で就職されます。(ちなみに、就労移行支援最大手のLITALICOワークスさんでも、2019年度の就職の内86%が障害者雇用とプレスリリースがでていました)
その理由は、2つあり、「定着率が高いから」「法定雇用にカウントされるから」です。
詳しく説明するのがちょっと大変なので、今はそうなんだくらいに思っていただけると嬉しいです。
そのため、ここでは障害者雇用で働いている人の雇用形態はどうなのか?を紹介したいと思います!
障害者雇用で働く人の多くが非正規雇用
平成30年度に厚生労働省にて公表された「障害者雇用の実態調査」では、以下のデータが発表されました。
- 身体障害者:47.5%
- 知的障害者:80.2%
- 精神障害者:74.5%
- 発達障害者:77.3%
少し前のデータなので、今はもう少し改善されているかもしれませんが、障害者雇用(就労移行支援を利用した)の雇用形態の多くが非正規社員になることが多いようです。
メガネ君の経験でもやはり最初は契約社員からスタートで就職される方が多く、その後定着支援の間に正社員を目指される方が多いかなといった印象です。
就労移行支援の就職先、どんな職種?
では、次にどのような職種で働かれているのかを紹介します。
こちらも先程と同じく、厚生労働省が平成30年度に公表した「障害者雇用の実態調査」を参考にさせていただきます。
身体障害者は事務職が一番多い
身体障害者の職種は事務職が一番多く、二番目に生産工程の職業でした。
生産工程の職業=工場などで働く職業のことを指し、特別な技術が必要な職種が多いようです。転職サービスを検索すると、生産管理や品質管理のお仕事が多いようです。
知的障害は工場などの勤務が多い
次に知的障害の職種です。
知的障害者は生産工程の職業が一番多く、二番目にサービスの職業が多いようでした。サービスの職業とありますが、詳しく見てみると医療や福祉介護施設等での清掃業や飲食店・小売などのバックヤードが多いようです。
精神障害者の就職先はサービス業が多い
精神障害者の就職先はサービス業・事務職・販売などが多いようです。
ただし、メガネ君の今までの経験では、これまで経験のある業界などで働く方も多い印象です。
発達障害者の就職先は販売の職業が多い
最後に、発達障害者の就職先です。
発達障害者の就職先は、販売職・事務職・専門技術職・サービス職の順番に多いようです。
発達障害者の場合、これまでになかった専門・技術職の方の割合が増えてきたように感じます。メガネ君の経験でも発達障害の方の中には、医師や研究職など専門的なお仕事をされている方も多くいらっしゃったかと思います。
大手就労移行支援の中では就職先の実績を出しているところも。
大手就労移行支援のひとつである、ウェルビーさんでは就職実績・就職先データをホームページで公開しており、その中に職種別の就職先も公開されていたので紹介したいと思います。
ウェルビーさんの職種別就職実績では以下のような職種で働いている方が多いようです。
1位:事務:56%
2位:軽作業:14%
3位:接客・販売・営業:7%
4位:清掃:5%
5位:福祉:5%
6位:技術職:4%
このように、就労移行支援事業所のホームページに就労移行支援の卒業後の就職先や職種が紹介されていると安心して利用できますね。
就労移行支援の就職先、企業規模別
さて、就労移行支援卒業後の就職先として、企業規模別のデータを紹介したいと思います。
「大手が良い」「大きさはともかく障害の理解をちゃんとしてくれるところが良い」など、人それぞれの希望があると思います。ここではLITALICOワークスさんのホームページに企業規模別の就職データがあったので、紹介しようと思います。
社員数1,000名以上の企業:48%
社員数300名〜1000名の企業:22%
社員数200名〜300名の企業:6%
社員数100~200名の企業:8%
社員数50~100名の企業:6%
社員数50名未満の企業:10%
障害者雇用促進法で定められている、障害者雇用率制度(法定雇用率)の観点から大企業(社員数が多い)の障害者雇用の実数が多くなりますが、LITALICOワークスさんの実績を見る限り、50名未満の企業でも積極的に障害者雇用をしている企業がある。ということがわかりました。
大手企業になればなるほど、マニュアルが整備されていたりすることも多いですが、機械的な働き方で合わない。という方も中にはいらっしゃいました。
就労移行支援を使ったら、本当に自分に合った働き方や環境を相談しながら就職先を探してみてください。
就労移行支援の就職先を具体的に紹介
就労移行支援の就職先をこれまで「雇用形態・職種・企業規模別」と紹介してきましたが、実際にどんな企業が障害者雇用をしているかいくつか紹介したいと思います。ここでもいくつかの就労移行支援事業所さんのホームページより掲載されている就職先情報から抜粋してご紹介したいと思います。
みんな知ってる大手企業
ANA・アマゾンジャパン・ユニクロ・無印・GAP・KDDI・ニチイ学館・日本郵便・伊勢丹・ほけんの窓口・スシロー・パーソルチャレンジ・東急リバブル・ソフトバンク・オープンハウス・積水ハウス・J:com・イオン・アイリスオーヤマ・ABCクッキング・帝国データバンク・JR・日本生命・電通..など
書ききれないくらいたくさんの大手企業で障害者雇用をされていますね!
実際の働き方は、実際の企業やその時の募集状況等に応じて異なるかと思います。メガネ君の経験では就労移行支援を利用すれば殆どの企業で体験実習(そこで雇用される前に実際の仕事を体験できる)があるので、気になる企業があれば就労移行支援を活用して体験実習をしてから就職先を決めるのもありですね!
これまで複数の福祉サービス(福祉業界)で転職をしてきたメガネ君も、この体験実習があればなぁ、、なんて何度も思いました。(福祉業界はほんっとうに当たり外れが多いので・・。)
障害者雇用率ランキング
東洋経済が毎年出している「CSR企業白書2022年」の中には障害者雇用率が高い会社のランキングを紹介しています。障害者雇用率が高い=就労移行支援を利用した就職先ではありませんが、ここではどんな企業が障害者雇用率が高いのかを紹介しようとおもいます。詳しく知りたい方はこちらを参照ください
順位 | 企業名 | 業種 | 障害者 雇用比率 | 人数 |
---|---|---|---|---|
1 | ゼネラルパートナーズ | サービス業 | 17.9% | 39人 |
2 | エフピコ | 化学 | 12.7% | 362人 |
3 | エイベックス | 情報・通信業 | 7.40% | 14人 |
4 | MRKホールディングス | 小売業 | 6.90% | 4人 |
5 | キトー | 機械 | 6.80% | 34人 |
6 | JSP | 化学 | 5.54% | 49人 |
7 | 関通 | 倉庫・運輸関連業 | 5.40% | 31人 |
8 | ファーストリテーリング | 小売号 | 4.71% | 1,101人 |
9 | デコボコベース | サービス業 | 4.42% | 5人 |
10 | AOKIホールディングス | 小売業 | 4.40% | 5人 |
※企業名部分には採用ページのリンクをいれてます
皆さんもよく知っている企業が多かったのではないでしょうか?
必ずしも障害者雇用比率が高い企業=働きやすい企業ではありませんが、多くの障害のある方が働いていると考えると、会社での障害者雇用への考え方がしっかりしているかもしれませんね。
就労移行支援の就職先まとめ
皆さんいかがでしたでしょうか?
就労移行支援を利用したらどんなところに就職できるの?本当に就職できるの?といった疑問を少しでもこの記事で解決できれば幸いです。
これから法定雇用率もどんどん上がると言われております。障害をもっている方がもっと働きやすくなる環境も整ってくることでしょう。
就労移行支援に通ってみたい!どんなところがおすすめなのか知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください!